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ときどきブックレビュー  

アサヒグラフ別冊 戦中戦後紙芝居集成 を読む。

アサヒグラフ別冊

戦中 戦後
紙芝居集成

1995年11月25日発行 朝日新聞社 2700円

古本価格(平成14年)6000円程度

戦中戦後の街頭紙芝居の紹介本です。戦前の作品は戦災で消失し、かろうじて残った物もGHQによって消却されてしまったそうです。戦後作られた物はあちこちで何度も、それこそぼろぼろになるまで使用し、最後は処分されてしまいました。現存する貴重な街頭紙芝居を一挙紹介しています。

 神奈川県横浜市にある老舗ホテル「ニューグランド」の近くの喫茶店。

 切り絵作家 風来坊氏(36歳)、ジャーナリストの毅氏(45歳)のお二人に語っていただきました。


毅氏「こんにちは、風来坊さん。お久しぶりですね。『小学四年生を読む』以来ですね」
風氏「こんにちは。本当にお久しぶりです。今回は私の蔵書から持ってまいりました」
風来坊氏、『紙芝居集成』を取り出す。毅氏、感心して手に取りしばらく読みふける。
*  *  *  *  *
毅氏「ふう、なんて面白いんでしょうか(笑)。この本1冊で酒が飲めますね(笑)」
風氏「そうでしょう、そうでしょう。私もこの本を見つけたときはその場で小躍りしたくなりましたから」
  「さて毅氏、どうですか、何か気になった紙芝居はありますか? それとも現実に見たことがありますか?」
毅氏「さすがに見たことはありませんね。この制作会社の三色会ってのが光っていますね。手書きですよね…カラーコピーなんて当時無かったですし、カラーの印刷だって出来ませんよ」
風氏「そうです。一枚一枚作家さんが手書きで作っていたそうです。なので同じ話でも絵が違うそうですよ」
毅氏「ひゃあ、それがたいへんだ」


毅氏「さて、この『黄金バット』ですが、凄い絵ですね(笑)」
風氏「シリーズになっていて、この『ナゾー篇』の他に『怪タンク出現』や『怪獣篇』などいろいろあるみたいです」
毅氏「制作会社もそれぞれ違うみたいですよ」
風氏「黄金バットの絵自体もだいぶ違いますが、赤いマント、ひらひらの白い襟、そして上の歯が一本抜けているところはみんな共通になっています」
一同爆笑
風氏「黒ネコ風の悪人がいい味をだしていますよ。目の色も赤と青だし。指が三本ってのもいいですよ」
毅氏「その部下が赤いとんがりずきんをかぶっているのが『十字軍』みたいですね」
風氏「なんとなく梅図かずお氏の”猫目小僧”を思い出します」
毅氏「おお、そういえば似ていますね」

毅氏「おお、これは”白馬童子”じゃないですか」
風氏「そうですね、この紙芝居から火がついたんじゃないですか」
一同絵柄を見る。
風氏「絵が絵物語のようにとってもリアルに描かれていますね」
毅氏「おそらく先ほどの”黄金バット”のように想像の世界で書くより、時代劇のほうが書きやすかったんだと思いますよ」
風氏「それにしても今見てもなかなかかっこいいですね。でもやっぱり”白馬童子”と言ったら山城新吾ですよね」
毅氏「そうそう!」
 「笑」

風氏「鞍馬天狗ですね。これも白馬童子と同じく紙芝居からTV、映画になった作品ですね」
毅氏「絵もきれいだし、内容も面白いです。全編みたいです」
風氏「僕は話自体は知らないので、新聞の四コマ漫画などで”くらまてんぐー”とか言ってはしゃいでいる子供が風呂敷包みを背負って、腰に刀を差している場面を先に思い出します」
 「笑」
風氏「それに”桃屋”のCMも思い出しますね」
毅氏「ああ、そのCMって出演者みんなメガネかけていて、しかもみんな顔が同じあれでしょ?」
一同大爆笑

風氏「外国の話もたくさん紙芝居になっていますね。この”恐怖のフランケン”もその中の一つです」
毅氏「基本的な内容は”フランケンシュタイン”ですが、随所に脚色していますね」
風氏「いろいろ難しい問題があったんじゃないでしょうか。でも、ずいぶんと『グロテスク』な『毒々しさ』がありますね」
毅氏「そこが子供たちにとっては魅力なんですね」
風氏「最終回に女の子が『おじちゃんはあたいとおともだちになるって言ったじゃないの。あたいのお父ちゃんをいじめるのなら、もうおともだちになってあげないわ』と言われて、やさしさを思い出すシーンがよいですね」
毅氏「その後お父さんを逃がしたとたんに銃で撃たれて死んでしまうのがちょっとかわいそうですね」
風氏「女の子の最後のせりふ『あのおじちゃん、本当にかわいそう…』って言うのが泣かせますね」

風氏「このあたりの絵は怖いですね(笑)」
毅氏「しかし、日本的なお化けはずいぶんと怖い絵になりますね」
風氏「この紙芝居を見た子供たちは夜うなされるんじゃないかな」

毅氏「さっきも言ったのですが、時代劇風の絵は本当に凝っていて、色づかいや構図もしっかりしています」
風氏「昔の”少年”や”少年倶楽部”などの付録の『天然色絵札』のようです」

風氏「今回僕が一番気に入ったのがこの友愛社の『いじわる』です。都会の小学校に田舎から転校してきた少女に、お金持ちの女の子がいじわるをする、ただそれだけの内容の紙芝居です(爆笑」
毅氏「そのお金持ちの女の子を『女王様のように登校し、しかもお供の女中が二人です』ってのがいいですね(笑)」
風氏「しかし、”貧乏”に対するディテールの細かさが凄いですね。ドヤ街や家の中のみずぼらしさ、ガラスの割れた所にテープなどとっても書き込んでいるのに、反対にお金持ちの女の子の方は髪にリボン、お弁当のおかずにリンゴやバナナ程度で”お金持ち”を表しています。もしこの紙芝居でお金持ちの女の子の家がでてきたら、きっと『暖炉にスリッパ、椅子とテーブル』が登場すると思いますよ」
 爆笑!
風氏「物語り終盤で『奇しき運命を持つ二少女が、同じ人生の一本道を歩んでいく。その前途は幸か不幸か。二少女の上に幸ぞあかし』ってのが本当に泣かせますね」
 大爆笑!

見れば見る程憎たらしいお金持ちの女の子。
がんばれ! 貧乏女の子!

 戦時中の紙芝居の数々。やはり「日本は勝つ!」 や「僕も大きくなったらりっぱな兵隊さんになってお国のためにがんばるぞ!」 系の紙芝居が多いです。たとえ負け戦を描いていても「…そして兵士たちはお国のために死んでゆきました。今でも語りぐさになっています…」となっているのが多いです。
 風氏談
風氏「こうやってかいつまんで読んでも時間が過ぎるのを忘れてしまうぐらい面白いですね」
毅氏「絵もすばらしいし、このほとんどが残っていないのが非常に残念です」
風氏「戦中戦後の紙芝居は日本の文化の一部となりますね。このような本でもっと紹介されるといいですね。しかし、よく残っていましたね」
毅氏「田舎の土蔵などに残っているそうです。もしかしたらまだ眠っている紙芝居があるかもしれませんね」
風氏「今、このように紙芝居や昔の漫画などが復刻されるのが多いですが、もちろん昔の作品がとても良いできなのもありますが、現在のTVや漫画などがあまりに低俗すぎるのもあるんじゃないかと思います」
毅氏「そうですね。漫画でも昔の復刻版が高値でもあるにかかわらず良く売れているそうです。これは懐かしいだけじゃないですね。まあ、色々難しい問題もあると思いますが、今回は『紙芝居は面白い!』って事でいいじゃないですか」
風氏「そうですね。いやあ、本当に面白かったです。ああ、”いじわる”を最後まで見たかった(笑)」
毅氏「私は各種”黄金バット”を全部見たいです。でも…やっぱり”いじわる”ですかね」
 一同爆笑
おわり

 

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