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都筑探偵事務所  

私はここ都筑探偵事務所の都筑所長の秘書秋絵。
ここの所長、都筑センセはいつもどこかへ遊びに行っちゃっているの。
都筑所長に頼まれて電話番だけで良いって言われてアルバイトを引き受けたんだけど、都筑センセ、今日もどこかへ行っちゃって、結局私が全部やることになっちゃうの。
もう、もっとバイト代はずんでもらわなきゃ。
でもね、私、ここの事務所に所属している所員が面白くって当分やめられそうもないの。
え、どんな人が所属しているかって?

じゃ、当都筑探偵事務所の所員を紹介するわね。


アルジェの忠太郎

 じつはね、あたしも本当の名前しらないの。瞼の母恋しさに外人部隊を脱走してきた番場の忠太郎、みたいな風貌だからみんなにあだ名としてつけられたみたい。もちろんアルコール中毒にもかけているみたいね。 新宿ゴールデン街にあるバー「まえだ」を中心に出没しているの。わたしも実は「まえだ」 で初めて会ったの。そのときは「もと刑事」だったけど。「まえだ」の仲間内では、あるときはもと刑事、またある時はもとポン引き、さては推理 作家、霊媒、ボディガード、私立探偵、泥棒と、とりどりに違う出身を明かすらしいの。仲間うちではどうやら本当は「もと刑事」だと思っているみたい。でもわたしが会ったと きは、黒ずくめの一張羅で、アルジェさんが「もと刑事」を自称するほどの往年の面影は なかったわね。 でもね、「まえだ」周辺で起きた事件の推理にはみんな脱帽しているわ。話もおもしろいし、 なんたって料金が安いのが良心的だわ。わたしの大好きなアルジェの忠太郎さんです。
そうそう、どんな活躍をしたかは、講談社文庫 「妄想名探偵」に活動記録があるのでそち らを読んでね。

出雲耕平&鶴来六輔

 出雲耕平さんはみんなTVで知っていると思うけど有名なオカルト評論家なの。少年週刊誌に「いずもオカルト・レポート」を掲載していて、その雑誌の出雲先生の担当記者の鶴 来さんとカメラマンの亀田さん、三人が登録されているの。東池袋にあるビルの七階に事 務所があるのだけど、その一階にある喫茶店に勤めている由香里が私の学生時代からの友達で、由香里は鶴来さんと付き合っているのね。でも、出雲先生知らなくてモーション掛けてくるみたい。色々話を聞くけど、どうやら事件を解決しているのは「鶴亀コンビ」の 鶴来さんと亀田さんなの。雑誌では出雲先生が解決したように書かれているけどね。ここだけの話だけどね、この三人は『幽霊騒ぎ』担当なのだけど、出雲先生、幽霊が大嫌いなんだって。鶴来さんは「生きた女のやきもちのほうがよっぽど怖い」っていっているわ。
この三人のどたばた活動記録は講談社文庫 「にぎやかな悪霊たち」にまとめているので 参考にしてね。

片岡直次郎&物部太郎

  この二人はとっても人気があるの。私も一押しね。もともと片岡さんが渋谷道玄坂で「警 察に頼めないトラブルの収拾業」をやっていたの。そこへ物部さんが「絶対に客のこない商売を考えてくれ」という事で、二人で「超自然現象探究専門の私立探偵」を開業したの。物部さんはね、お家がとってもお金持ちで「大金持ちの息子は働いて金を稼ぐのは許されない」という信条を持っているの。おかしいでしょ。自分でも「ものぐさ太郎の生まれ変わり」って言っているぐらいだものね。私もたまに道玄坂まで行ったときに物部さんとお話するんだけどね、とっても物知りで話していて飽きないの。スポーツもゲームも達人的なうまさがあるしね。結構繁盛しているみたいだけど、お二人が気に入らないと引き受けないようね。料金もほかと比べようがないぐらい高いし。でも、腕はたしかよ。物部さんって、うちの事務所に所属しているゴーストハンターの中でも雪崩さんや出雲先生と違ってとっても合法的に解明するの。
片岡さん個人での活躍は 角川文庫 「吸血鬼飼育法」をごらんになってね。
お二人でコン ビを組んで活躍した記録は 角川・光文社文庫 「七十五羽の烏」、「最長不到距離」、「朱漆の壁に血がしたたる」をごらんになるとわかるわ。

キリオン・スレイ

 私が前に池袋の外国語学校に通っているときの講師の先生だったの。これがたまたま私がアメリカに留学していた時に知り合った目白に住んでいる翻訳家の青山富雄さんの家に居候しているって聞いたときとっても驚いたわ。「とみぃ」って呼んでいるるから別人と思っていたのだけど、紹介されてびっくり。とみぃこと、青山さんが言うには最初に来日した時に殺人事件に出くわして、鋭い直観的推理で見事解決! それで四谷署の天野部長刑事にも「青い目の銭形平次」なんて呼ばれることになったの。キリオンは「アメリカの前衛詩人」って言っているけど、大の推理小説好き。いつも怠けているくせに女の子を口説くときと犯罪事件には好奇心が働くみたい。時にとんちんかんな日本語を話すけど、それがひげのお顔にとっても似合って、大柄でたくましくってステキですよ。今はアメリカに戻っちゃっているけど、何かあったら日本にこようと思っているらしいわ。
キリオンの活躍は結構あるのよ。 角川文庫 「キリオン・スレイの生活と推理」、「復活と死」、「再訪と直感」、「敗北と逆襲」事件を頼まなくても記録を読むだけでもキリオンに会いたくなるわね。私もキリオンに会いにアメリカへ遊びにいこうかな。

クォード・ギャロン

 クォードもキリオンと同じでアメリカ人なの。もともとエド・マクベイン探偵局の一員だったのだけど、引退同然になっていたのをわが都筑所長がスカウトしてきたの。奥さんと間男を拳銃で殴り殺そうとした為、探偵許可証を取り上げられちゃって、そのままルン ペンになっちゃったのだけど、やっぱり探偵の習性をくすぐられると疼くみたい。そのところがアルジェさんに似ているわね。
クォードの活躍は 桃源社 「酔いどれひとり街を行く」で読めるわ。

草間次郎君と和木俊一

 次郎君は当所員の中では一番の最年少ね。中学二年生だもの。でもね、ただの中学生じゃないのよ。祖父の草間博士は大学の心理学教授だったの。退職後に超心理学を研究していて、その助手の奇術師ドクター・ミラージュこと久保寺俊作さんと仲がよくてね、そのおかげで次郎君も探偵の才能を開花させたらしいの。東都大学大学院万年学生の和木俊一さんの、下宿先の美香さんと事件を解決したこともあるのよ。次郎君のお兄さん、昭一さんが週刊誌の記者をしているのだけど、そこから事件を推理する事もあるみたいね。和木俊一さんはおばけ博士って呼ばれているの。民族学を研究しているので、幽霊や妖怪にも関心を持っていて、怪異がらみの事件があると繰り出されるし、自ら首を突っ込むこともあるみたい。でもね、怪異現象ではなくてその背後に悪漢の企みがある事を突き止め るのが一番好きみたい。
草間次郎君の活躍は ソノラマ文庫 「蜃気楼博士」、和木俊一さんは「こんばんは幽霊です」で見られるわ。

久米五郎

 もともと警視庁捜査一課に勤めていたんだけど、奥さんと娘さんを自動車事故で失ってしまってそのショックで退職してしばらくはお酒におぼれていたらしいわ。でも、今は水道橋近くの四階建てのビル最上階に探偵事務所を開いてがんばっているの。一階下の姪の暁が同年輩の同業弁護士と共同運営している法律事務所からおもに仕事を回して貰っているの。元刑事なので年の割には感が冴えるのだけど、ちょっと飲みすぎかしらね。浅草千束にある飲み屋「かいば屋」でよく飲んでいるところを見るわ。あ、この「かいば屋」にはアルジェの忠太郎さんもたまに来るみたいね。
活躍は 立風書房 「ハングオーバーTOKYO」または 集英社文庫 「二日酔い広場」で見られるわ。

鍬形修二

 彼は変わっているのよ。カード占いなんだけど、「タロウ・カードの神秘、ESP超感覚うらない」っていう看板を出しているの。じつはね、ここだけの話だけど、彼、お兄さんと一緒に暮らしていて、そのお兄さんが交通事故で亡くなったの。アパートが兄嫁の持ち物なので部屋代を稼ぐためにタロウ・カードを使って占いを始めたのね。私、一度占ってもらったんだけど、色々話しながら占うので、どちらかと言うと直感型占い。要するに推理力で相談ごとを解決するみたいで、タロウ・カードでの占いは眉唾物ね。最近はあまり仕事をしていないみたい。 活動報告書は 光文社文庫 「西洋骨牌探偵術」なんだけど、彼、五件しか事件を引き受けていないみたいなの。だから相談するなら活動報告書をよく読んでからがいいわね。

近藤庸三&土方利夫

 うーん、彼らねぇ。あまりおすすめしないわ。お二人とも面白いんだけど、友達とビジネスは別よ。近藤氏は悪いことなら何でもする名人ね。ただし殺人と手荒なことはしないところがいいかしら。頭と口先の弁舌、手先の器用さはすばらしいわ。職人らしく小道具にたよらないで腕前だけに頼る所はおもしろいわね。縄抜けなんて得意よ。勉強家で話術の修行を兼ねて落語家の内弟子となって、欣遊亭京好の芸名ももっているの。土方氏はね、もともとトラブル・コンサルタントをしていたの。小児麻痺で足が不自由なふりをしてステッキを持っているけど、これ、業務に使う小道具が入っているの。近藤氏は技術を売り物にしていたけど、土方氏は違うわね。色々な小道具を使うハードウェアタ イプかな。色々悪いことを考えるのが得意で、「悪意銀行」を設立するの。なんでそんな銀行作ったと思う? 「犯罪の洗練と質的向上の為」だって。おかしいでしょ。相談もできるけど、「アイディア」を貯金する事もできるのよ。結局二人、コンビになってこの「悪意銀行」を共同経営しているわ。
その活躍はね…と、言うより事件簿ね、 角川文庫 「紙の罠」、「悪意銀行」などで読むことができるわ。あ、彼達に仕事を頼むなら話の持っていき方次第で金額が変わるからがんば ってね。

西連寺剛

 彼とはよく飲んだりしているわ。若いころプロボクサーだったの。とっても強かったんだけどリングで相手を死なせちゃって、それで引退して私立探偵を始めたの。たくましくってタフで、でも心根はとっても優しくて、私のタイプなの。都筑探偵事務所以外に、新宿西口にあるオノダ探偵社に客員探偵として登録しているわ。アメリカと違って個人で良心的に私立探偵として生活するのは大変みたい。タバコはセブンスターを吸って、お酒はいつも水割り。読書家なのよ。あら、そんな事聞いてないわね。ごめんなさい。前の事件でね、やくざに軟禁されたときなんだけど、やくざに「あしたのお天道さまは拝めねえぞ」と脅されたらしいの、でも「そういえば、けさの天気予報で、明日の朝は曇りだとかいってたな」だって。彼の豪快さが分かるでしょ。
彼の活躍は 新潮文庫 「脅迫者によろしく」、「くわえ煙草で死にたい」で読むことができるわ。彼は私の一押しよ。

センセー&なめくじ長屋一同

 センセー、って言っても所長じゃないわよ。えへん、じつはね、当都筑探偵事務所には過去、未来からの相談も多いの。江戸時代には当探偵事務所から『センセー』が登録されているの。センセーは、砂絵を描く大道絵師、神田筋違御門の八辻ガ原の河原を書場簾代 (かんばす)わりに、指の間から色とりどりの砂を落として絵を描き、見物人から小銭をあつめてるのがセンセーの本職。私も素性は詳しくは教えてもらっていないんだけど、もとは武家だったらしいの。博識で、剣術から曲投げの振捨飛(ふりすび)に至るまでできないことはない人物なの。それにね、江戸時代には珍しい合理精神の持ち主でね、不可解な事件も論理的に解いてしまうの。でね、いつも知恵を借りに来るのが、下駄常の岡っ引きの常五郎さんなんだけど、センセー、だいたい事件を裏からかき回してふところの豊かな人から礼金をたんまりいただいているらしいわ。でもこれはうわさね。いつもセンセーの捜査に協力してくれるのがなめくじ長屋一同なの。あ、この「なめくじ長屋」はね、神田橋本町…今の東神田一丁目あたりになるんだけど、棟割長屋のことなの。メンバーが全員非人がしら車善七の支配下にある大道芸人でね、雨が降ると往来での商売が出来なくなるから、雨の日は昼間から長屋にのったくっているのを見て、誰ともなく「なめくじ長屋」と付けたみたい。ちょっと長くなるけど「なめくじ長屋」のメンバーを紹介するわね。
河童の真似をして銭を貰う裸こじきのカッパさん。
幽霊見世物のユータさん。ふふ、いつも張りぼてのお墓を担いでいるのよ。
わいわい天王を称してお札をまくテンノーさん。
願人坊主のガンニンさん。
荒熊の真似をするアラクマさん。アラクマさんの熊の遠吠えはすごいわよ。
大道曲芸師のマメゾーさん。
こじき芝居の女形、オヤマさん。オヤマさんはとっても綺麗よ。
ね、とっても面白い人達が集まっているでしょ。江戸時代は色々な事件が多くてね、センセーもお仕事忙しいみたい。 おのおのの活動を話していたんじゃきりがないから、活動報告書を読んでね。あ、読むだけでも一見の価値ありね。
角川文庫、光文社文庫 「なめくじ長屋捕物帖シリーズ(おもしろ砂絵、血みどろ砂絵など)」

退職刑事

 論理的思考と経験だったら退職刑事さんしかいないわ。え、何で名前で言わないのかって? じつはね、退職したあとも息子の五郎さん…あ、五郎さんはね、退職刑事さんの…ああ、言いにくいわね。いつも「おじさま」って呼んでいるのでおじさまにするわね、の五人息子の末っ子で刑事をしているの。おじさまはもと警視庁捜査一課を定年退職しているんだけど、さっきも言ったように「論理的思考と経験」は誰よりも負けないの。これって、都筑所長に似ているわね。それで五郎さんを通して今でも事件の解決に力を貸しているらしいわ。だからちょっと名前は言えないの。おじさまのすばらしい所は、五郎さんの口から事件の内容を聞いて、その場で解明するの。典型的な安楽椅子探偵ね。居眠りしているようだけどデータは一つも聞き逃さないし、明治の東京の下町に生まれた人情あふれるステキなおじさまね。私もたまに五郎さんのお宅でおじさまのお話を聞くけど、本当にいろいろな事を知っていて、いつも楽しませてくれるわ。おじさまにはずっとがんばってほしいわ。
おじさまの活動記録は 徳間文庫 「退職刑事シリーズ」で読むことができるわ。

滝沢紅子&猿紘一

 彼女は私の知り合いなの。彼女はJR中央線多摩由良駅から十五分ぐらいの場所にある「メゾン多摩由良」に住んでいるの。そこのマンションはね、十二階建ての豪華マンションなんだけど、一階と二階が商店街、あとが住居になっていてね、彼女のお父さんとお兄さんがマンションの警備をしているの。警備と言っても「○×警備会社」とかじゃなくて、マンション独自の警備なの。お父さんはもと刑事なのでとっても優秀よ。いつも私服で見回りをしているので『ハウス・ディック』って感じね。そのマンションの地下にスナック「破裸毒巣(ぱらどっくす)」があって、そこで私は紅子と知りあったの。マンションとその周辺で起きる事件に紅子が首を突っ込むと、お父さんは古いタイプの人間なんで、「女子供のしったことじゃない」って介入をゆるさないの。でも、持ち前の好奇心は抑えられないわね、スナック「破裸毒巣」に集まるメンバーで「青年探偵団」を作ってなぞに挑戦しているわ。猿さんはメゾン多摩由良十階に住んでいる自称ルポライター。紅子と付き合っているわ。とってもあかぬけていて、優雅な暮らしをしているの。どちらかと言うとホームズ役が猿さんで、紅子はワトスン役ね。紅子が言うには「演技力や変装を駆使する仮説実証型の探偵」だって。私にはちょっとキザに見えちゃうんだけど。お猿さんて呼ばれて いるけど、紅子は「むしろターザン」と言っているわ。彼女の活動記録はたくさんあるの。
集英社文庫 「全戸冷暖房バス死体つき」 光文社文庫 「髑髏島殺人事件」、「まだ死んでいる」、「前後不覚殺人事件」、「南部殺し唄」 調査の依頼をするならまず、「破裸毒巣」に飲みに行って友達になっちゃうのがいいかもね。

為永春水

 この人とは話したことがないのよ。江戸時代後期の人情本作者。この為永春水はペンネームで本当は越後屋長次郎さんなの。本職は講釈師なんだけど、小説が好きで貸本屋をしているの。身近で不可解な犯人消失事件が起こったのをチャンスに謎を解き明かして新趣向の探偵噺に仕立てようと思ったらしいの。だけどね、真相は見抜いたけど、事情によって高座にかけられなくなっちゃったの。でもね、その話をネタに「春色梅ごよみ」を書いたら、これが空前のベストセラーになっちゃったの。でもね、その「春色梅ごよみ」を模したような事件が起こって、作者の春水さんに疑惑がかかっちゃったの。しかたがないので、絵師の歌川国直と探偵コンビをふたたび組んで事件を解決したの。砂絵のセンセーとはまた違った面白さがある人よ。
事件簿は 読売新聞社 「都筑道夫自選傑作短編集 “春色なぞ暦”」を読んでね。

都筑道夫

 そう、この都筑探偵事務所の所長です。都筑所長はね、推理小説が大好きなの。ほら、ここの事務所の隣の八畳の部屋、壁と言わず床と言わず本ばっかり。それも推理小説ね。私も好きだから内外の小説はかたっぱしから借りて読んでいるの。読むばかりじゃなくてどうやらこっそり推理小説も書いているらしいの。でもね、なかなか鋭い推理力も持っているのよ。ただし、所長は「所員の物部太郎を理想」とするなまけ型探偵なの。ほとんど出歩かず、私に調査させてその報告から推理するアームチェア・ディテクティヴだって言っているわ。それなのになぜかいつもこの事務所にはいないの。これ、どういうこと? 
都筑所長の事件簿はね、とってもおもしろいのよ。森の石松と清水の小政が同一人物だと立証した 集英社文庫 「犯罪見本市 “森の石松”」 生年を改竄する不逞紅毛人の陰謀を覆滅した 晶文社 「死体を無事に消すまで “幻のウ ールリッチ”」で読むことができるわ。

雪崩連太郎

 雪崩さんも私のお勧めの人ね。トラベル・ライターで、紀行記事を得意とするフリーのルポライターなの。メインの仕事は『トラベル・マガジン』に連載されている「雪崩連太郎幻視行」なんだけど、いつも地方の怪奇な伝説や風変わりな事物を一人で取材、撮影しているの。彼、結構もてるのね、必ず取材先の女性に言い寄られているわ。じつはね、今の『トラベル・マガジン』を連載する前にどうやら同人誌『侏羅記(じゅらき)』に参加していたらしいの。だから淡路瑛一さんとも知り合いらしいわ。
彼の活動記録は 集英社文庫 「雪崩連太郎幻視行」、「雪崩連太郎怨霊紀行」でわかるわ。

念仏の弥八

 今までの所員とはちょっと違った人ね。駒形に住む岡っ引きなんだけど、首に鉄製の数珠をかけていて、鉤を外してひと筋になったのを振り回すの。これ、すごい武器でね、剣にも太刀打ちできるのよ。それで念仏のあだ名がついたの。もと同心の稲生外記の手伝いをしていたの。下手人が幻術を使う怪異なものが多いわね。外記さんが隠居してからは弥八さん、お金にがめつくなったけどじつは、盲目の娘涙(るい)さんに贅沢をさせたい為らしいの。とってもやさしい所もあるのよ。その涙さんは超能力があって、弥八さんもたびたび救っているの。
事件簿は「梅暦なめくじ念仏」に記録されているわ。

鼻たれ天狗

 ふふふ、彼は人間じゃないの。大天狗になるために修行中の新米木っ端天狗なの。でもね烏天狗ほど下っ端ではないわ。え、何で鼻たれって呼ばれているかって? それはね、まだ新米で、風を吸い込む修行で鼻がどんどん長くなっているのだけど、いまだに屹立の状態には至らなくてまだ垂れてるの。だから鼻たれ天狗って呼ばれているのよ。人間からも妖怪からも頼りにされている大天狗さまはとても忙しいの。だから大天狗さまがあほらしくて直々のりだせないスモール・トラブルを代わって解決に奮闘しているの。それでもなかなか鼻たれ天狗さんには手に余るものの、修行のためだって、師匠は手助けしてくれないのよ。ちょっとかわいそうね。でも、たまに師匠をだしぬくあたりはやっぱり修行の成果がでているのね。
鼻たれさんの活躍は 徳間文庫 「フォークロスコープ日本」に記録されているわ。
ちょっと、面白いから読むだけでもいいわよ。

ビリイ・アレグロ・ラトロデクトス・ナルセ

 私の知っている所員のなかでもこれほど現実味がないのもめずらしいわね。ビリイは宇宙版ニック・ヴェルヴェットと言うか、窃盗専門のノースウエスト・スミスと呼んだらいいのかしら。一番分かりやすいのが、漫画「宇宙海賊コブラ」ね。未来宇宙を舞台に銀河系を渡り歩いて、悪い金持ちや高価な美術品をねらうの。人を傷つけたり殺したりしない紳士海賊ね。「宇宙海賊コブラ」には女性型アンドロイド「レディ」がいたけど、ビリイにはファタール・アルダー星の原始林に住んでいた好奇心旺盛の毒蛇なの。この毒蛇、テレパシーと不思議な能力を持っていてね、いつもビリイの腰にベルトみたいに巻きついているのよ。その毒蛇には「ダイジャ」と名前をつけたの。それにビリイ名前からわかるように遠い先祖に日本人がいるらしいの。でもね、ビリイはまだ日本に来たことはないみたい。でも、愛用の宇宙船の名前にも「タロウ」って付けているからどこかしらで日本…地球には興味はあるみたいね。銀河系をかけた問題にはビリイに相談するのが一番いいけど、お金がかかるわよ。
ビリイの活躍は 集英社文庫 「銀河盗賊ビリイ・アレグロ」に報告されているわ。

星野刑事

 彼はね、素性を明かすことは禁じられているの。だから、ここで話した内容は他言無用よ。いいわね。そうじゃないと…ね。彼は東京警察三課の刑事なの。でもね、東京って言ってもこの地球ではないのよ。人類が太陽系第三惑星を棄てて第二の地球として新しい星に移住して数十世紀たった違う東京なの。そうなの、未来はそうなるのよ。え、なんで東京って名前がついているかって? それはね、最初に第二の地球に移住してきた先祖が地球をしのんで「東京」ってつけたからなの。だから「ニューヨーク」だって「パリ」だってあるのよ。それでね、警察の機構も変わっていて一課は「交通課」、二課は「捜査課」で三課が「殺人課」なの。殺人課の意味も変わっていてね、医療機構と精神管理の発達で、殺人衝動は解消されて殺人自体がなくなったの。だから殺人を捜査するのではなくて、「殺人願望を持ってしまった人」を発見して事前に殺すのが殺人課の仕事なの。ようするに地下組織ね。彼、星野刑事はね、本当は重症の殺人願望を持っていて処分される側の人だったの。だけど特殊な能力を見込まれて、矯正されて殺人課に配属されたのよ。彼はタフでハードボイルドそのものって感じね。
星野刑事の活動報告書は 徳間文庫 「未来警察殺人課」で回覧することができるけど、絶対に他言無用よ。そうじゃないと責任もてないわよ。

茂都木宏&蘭子

 宏さんはとっても面白い人なのよ。浮気癖もギャンブルにも手をださない理想的なだんなさんなんだけど、推理小説が大の大好き。それもただ読むだけじゃなくてね、作中の名探偵や怪盗になりきってしまうの。そりゃ、服装や言動もその時のモデル探偵に忠実になりきるの。でもね、うふっ、おかしいの。私、たまたま「金田一耕助もどき」の時にお会いしたんだけど、まるで「鹿鳴館のダンスパーティに招かれた“坂本竜馬”」みたいだったの。笑っちゃいけないと思ったんだけどね。ふふっ。思い出してもおかしいわ。あ、写真あるの。これ。ね、おかしいでしょ。隣に写っているのが奥さんの蘭子さん。彼女と宏さんは私鉄の駅のそばにある、スナック「伊留満(いるまん)」のマスター夫婦なの。色々な事件を解決するんだけどね、じつは宏さんのプライドを傷つけないようにしながら解決するのはもっぱら彼女、蘭子さんなの。ここだけの話だけどね、宏さんのお父さんが暗黒街でかなりならした人だったの。蘭子さん、お父さんに助けられた経験があるらしいのね、だからその恩返しもあるみたいなんだけど、蘭子さんが宏さんに首ったけなのよね。あつあつ。蘭子さんも言っているわ「浮気やギャンブルにおぼれるよりまし」ってね。蘭子さんも冒険は嫌いじゃないみたいだしね。お二人とも結構楽しんでいるみたい。
宏&蘭子さんの報告書は 文春文庫 「名探偵もどき」に記録されているわ。

シルビア

 シルビア姉さんはね、吉原にあるソープランド「仮面舞踏会」に勤めているの。特殊浴場だから、名前もしらない同士が一時間半、個室ですごす気楽さからいろんな話をすること結構あるらしいの。奥さんの事や会社の愚痴などね。はあ、男の人って大変ね。シルビア姉さんが言うにはお客さんが持ち込んでくる事件を推理するのが趣味なんですって。今まで、奥さんの心理分析から殺人事件の犯人当てまでこなして、 まるでアームチェア・ディテクティブね…あ、ベッド・ディテクティヴって言ったほうがいいかしら。私は女だからソープランドなんて知らないけど、都筑所長は結構好きみたいよ。あ、内緒ね。
シルビア姉さんの活躍は 新潮文庫 「泡姫シルビアの華麗な推理」、光文社文庫 「ベッド・ディテクティヴ(泡姫シルビアの探偵あそび)」で読むことができるわ。


さて、都筑探偵事務所に第一期に登録されたメンバーが今紹介した人たちなの。
まだまだたくさんいるんだけど、それはまた次の機会に紹介するわね。え、すぐに知りたいって。
うーん、困ったわね。じつは都筑所長がちっとも資料を整理してくれないので私にもまだ把握しきってないの。
だから、ごめんね、もう少し時間ちょうだいね。それにしても所長は何をしているのかしら、外へ出たっきり今日も帰ってこなかったわ。
連絡もないし。
……あら、もうこんな時間。ごめんなさい、今日は西連寺さんとお食事なの。また時間ができたらぜひ寄ってらしてね。
それじゃ、またね!

 

別冊新評 「都筑道夫の世界」参考

 


 

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