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早起きはたのしいな 朝顔の実験

 小学四年生のふうちゃんは、夏休みの間、早起きしてお庭に咲いているお花に水をあげています。
今日は明け方に雨が降ったのか、地面が濡れています。 四月に種を蒔いた朝顔、向日葵が元気よく育っていてにこやかにふうちゃんに話しかけているみたいです。
ふうちゃんはじょうろで水を持ってきたのですが、水撒きはやらなくてもよさそうです。
今日はじっくりと朝顔を見ていて、単色で咲いている花、白い筋の入った花、水玉のような淡い模様の入った花。いろいろな花が咲いているなあ、と思っています。

「ふうちゃん、おはよう!」
気づくとお庭の入り口に親戚の大学院生のコペルおじさんがいます。
このおじさんはお母さんの弟にあたり、ふうちゃんのおじさんというわけで、お家が近所なのでふうちゃんとコペルおじさんはよく行き来しています。 ふうちゃんはおじさんのことを「コペルおじさん」と呼んでいます。

「あ! おはようございます。コペルおじさん。今日はどうしたの? こんなに早い時間に」
ふうちゃんがじょうろを片付けながら聞きました。
「うん。最近は朝方が涼しいので研究室まで散歩しているのだけど、今日はふうちゃんが育てた朝顔 が見たくてちょっと寄ってみたのだよ」
コペルおじさんはそう言いながらたくさんの花を付けている朝顔の鉢の前まで来ました。
「おおきな花を付けているね。でも、もう朝顔の季節も終わりだね。ふうちゃん、ここをごらん」
コペルおじさんが示した所は、花が終わり、まだ緑色ですがだいぶ膨らんでいる核の部分です。
「だいぶ大きくなっているね。もう少ししたら種ができるよ」
ふうちゃんも寄って、見ています。
「本当だあ。大切に採取して来年も蒔こうっと」
コペルおじさんがニコニコしながら質問してきました。
「ねえ、ふうちゃん。朝顔はどうやって種を作るかわかるかな?」
ふうちゃんはすぐに答えました。
「コペルおじさん、それは理科の教科書に載っていたよ。おしべとめしべが受粉して、花の核に種ができるのでしょ」
ふうちゃんは朝顔の、ちょうど種のできかけた所を指差しながら言いました。
「じゃあ、受粉するにはどうすればいいのかな」
コペルおじさんはふうちゃんに質問しました。
「それはね、花の蜜を吸いにくる虫の体についた花粉がめしべについたり、風でついたりして受粉 するんだよ」
「うん、正解だけど、ちょっと違うかな」
「え、何が違うの? これ以外の方法はないはずだよ」
ふうちゃんはちょっと意外な顔をしました。
「じつは朝顔は花が開く前にすでに受粉しているのだよ」
「え!」
ふうちゃんはびっくりしてしまいました。だって、そんなことは初耳だったのです。
「じゃあ、ふうちゃん。夕方おじさんがふうちゃんの家にくるからその時にでも朝顔について考え てみようか」
コペルおじさんがそう言って帰ってゆきました。
「よし、おじさんが夕方くるまでに朝顔についてちょっと勉強しておどろかせてみようかな」
そう言ってふうちゃんはお家に入っていきました。

 二階の自分の勉強部屋で、今日の分の夏休みの宿題を終わらせて、ふうちゃんはおとうさんの書斎だった一階の部屋へ降りてきました。
「ええと・・たしか植物の本があったはず・・」
おとうさんの書斎の本棚は天井まであるほどの大きさで、正面の窓以外の壁はほぼすべて本棚になって います。重厚な本でふうちゃんには題名も読めないような金箔文字が書いてある本もあります。
「えと・・あ、あった」
ふうちゃんが見つけた本は「植物の生態」という本でした。
「よし、これで調べてコペルおじさんをびっくりさせてやろう」
そう思いながら自分の勉強部屋に上がっていきました。

 さて、おとうさんの部屋から持ってきた本ですが、すこしばかり専門すぎてふうちゃんには難解らしいです。だいぶ頭を痛めて読んでいます。 でも、朝顔はつぼみの中でおしべがのびていく時にめしべにさわり受粉する事、ひと株からは同じ色の花しか咲かない事、つぎ木のしやすい植物である事などいろいろな性質がわかりました。
「よし、コペルおじさん早くこないかな」
そんな事を思いながらおじさんがくるのを待っていました。

  夕方になり、ふうちゃんがお庭で朝顔の観察をしていると垣根からコペルおじさんが顔をだしました。
「やあ、ふうちゃん。お待たせ」
「コペルおじさん、待っていたんだよ」
コペルおじさんは裏木戸をくぐってお庭に入ってきました。 ふうちゃんはさっき朝顔について調べた本を小わきに抱えています。
「おや、ずいぶん難しい本を持っているね」
「うん。おじさんを待つ間、自分なりに朝顔の事を調べたんだ」
「さきに自分で調べるなんて関心関心。じゃあ、もういろいろな事は知っているのだね。じゃあ、受粉 がどうしてミツバチなどを介しないでつぼみの時に行われるかはわかったかい」
ふうちゃんは残念そうな顔をしながら答えました。
「それがこの本ではつぼみの時に受粉する事は書いてあるのだけれども、なぜかは書いていないんだ」
「そう。じゃ、ふうちゃんはなぜだと思う?」
「うーん」
ふうちゃんはちょっと考えています。
「ヒントだすね。動物や植物は種族を守り、後世に残すために子供を産んだり、種を作ったりするよね。 外敵から身を守ったりもするね」
「うん」
「そうしたら早く受粉したほうがより確実だし安全だよね」
「偶然を待つより、より確実に受粉する方法を朝顔は見つけたんだね」
ふうちゃんは明るい顔で言いましたが、すぐに疑問が湧いてきました。
「でもさ、誰が教えてくれて、どうして朝顔がそうなったの。ほかの花だってそうすればいいのに」
「それはまだわかっていないんだよ。朝顔の受粉も、そうじゃないかという一つの考えなんだよ」
「ふーん」
ふと、ふうちゃんは今朝見た朝顔を思い出してコペルおじさんに質問しました。
「ねえ、おじさん。今朝咲いていた朝顔の花で白い筋の入った花や水玉模様の花があったけど、あれは遺伝なの」
もう花のしおれてしまった朝顔の鉢植えの前に来て、ふうちゃんが言いました。
「そうだよ。受粉する時にほかの色の朝顔の花粉がつくと、その遺伝子が影響して変わった色の朝顔ができるんだ。朝顔の品評会なんかではいろいろな色の花の花粉を人工的に受粉させて模様や色を作ったりするんだよ」
「じゃ、この水玉模様の花も遺伝なの?」
ふうちゃんはしぼみかけた花を手でそっと開きながら聞きました。
「うん・・? ああ、これか」
コペルおじさんはちょっと考えてから言いました。
「じゃあ、面白い実験をしてみようか。でも実験は朝顔の花を使うから朝がいいね。ついでに朝顔の開く様子も見ようか」
「うん」
「ふうちゃん、さっき言った水玉模様の花が咲いた鉢植えはどれかな」
ふうちゃんはその鉢植えをおじさんの前に持ってきました。
「ふうちゃん、これを見てごらん。あした咲く花のつぼみがあまりないね。ほかの鉢植えで一番つぼみのある鉢もここに持ってきてくれるかな」
ふうちゃんは鮮やかな赤い花をつけていた鉢植えを持ってきました。
「うん、これは元気だね。八つもつぼみがついている。じゃあ、実験の準備をしようか。ふうちゃん、 お家にまだ黒いポリ袋ってあるかな」
「ちょっと待ってて、今見てくる」
ふうちゃんはお家のなかへ入っていきました。 しばらくして、ふうちゃんは黒いポリ袋を数枚持ってきました。
「はい。おじさん」
コペルおじさんはふうちゃんから黒いポリ袋を貰いました。
「ちょっと薄いな。じゃあ、このポリ袋を二重にして使おうか。さあ、ふうちゃん。この袋を二重に して朝顔の鉢植えの上からかぶせてごらん」
ふうちゃんとコペルおじさんは朝顔の鉢植えに光が入らないように黒いポリ袋をかぶせました。
コペルおじさんが下のほうに穴を開けています。
「あれ、なんで穴を開けるの?」
ふうちゃんが聞きました。
「植物も人間と同じように呼吸をしているんだよ。ちゃんと息ができるようにしないと朝顔が死んでしまうからね。実験で使うにしろ大事にしてあげないとね」
二つの朝顔の鉢植えにかぶせたビニール袋に穴をあけました。
「さあ、これでいい。じゃ、ふうちゃん。あしたの朝六時にこのお庭で実験をしようか」
「うん」
「あ、そうそう。おかあさんが夕食をいっしょにどうですかって。すき焼きだよ」
「お、そうかい。じゃ、今日はいっしょに食事をしようか」
ふうちゃんとコペルおじさんはお家の中に入っていきました。

* * * * *

翌朝、ふうちゃんとコペルおじさんはお庭で実験を始めました。
「さあ、袋を取って朝顔の花が咲くところを見ようか」
コペルおじさんは二つの朝顔の鉢植えにかぶせてある黒い袋を取りました。 しばらくすると、朝顔のつぼみが少しずつ膨らんできて、花が咲き始めました。
ふうち ゃんとコペルおじさんはじっとその開く様子を見ていますと、 約三十分ほどで花はほぼ完全に開きました。
「コペルおじさん。すごいね。僕はじめて見たよ花の開くところ」
ふうちゃんは興奮して話しています。
「ところでふうちゃん、昨日言っていた水玉模様の花は咲いているかい?」
ふうちゃんは気づいたように鉢植えを見ました。
「あれ、おじさん。普通の朝顔の花だよ。おかしいなぁ。花の模様は遺伝だから一つの株に二つの模様が咲く事はないんでしょ?」
ふうちゃんはコペルおじさんに聞きました。
「そうだよ。じゃ、その実験をしてみようか」
コペルおじさんは袋からなにやら実験道具を出しました。試験管、試験管たて、薬さじ、白い粉が入った小さな薬ビン、透明な液体の入った薬ビン、スポイト、長細いすり鉢とすりこぎ。
「わあ、なんだか本物の実験みたい」
ふうちゃんはうれしそうです。
「ふうちゃん、まずは色水を作ってみようか。こっちの鉢植えの赤い朝顔の花びらを四枚ほどちぎって 持ってきたまえ」
縁側に腰掛けておじさんは言いました。
「はい。持ってきたよ」
「それじゃ、ふうちゃん。このすり鉢に花びらと水を少し、そう。このすりこぎでゆっくりしごいて色水を作って」
ふうちゃんも縁側に座り、コペルおじさんが持ってきてくれたすりこぎを動かして色水を作りました。
「花びらのかすがでるからはじによせて、色水をスポイトでこの試験管にいれて」
試験管三本すべてに色水が入りました。
「試験管に入っている色水は赤紫だね」
ふうちゃんは試験管をかざしながら言います。
「きれいな色だね」
「そうだね。それじゃ、ふうちゃん。この二つの薬品を使って色がどう変わるか実験しようか。この 薬品はね、どこのお家にもある普通の物なんだよ。この青いふたの白い粉は『重曹』といってアルカリの素で、こっちの赤いふたの液体は『酢酸』といってね、じつは『酢』なんだけどね、酸性の素なんだよ。この薬品をスポイトで1~2滴たらしてごらん」

  
朝顔の花びらの色水     アルカリの素を入れる    色が濃くなった

  
朝顔の花びらの色水     酸性の素を入れる      色が薄くなった

 試験管にアルカリを入れたもの、何も入れていないもの、酸をいれたもの、を順番に試験管たてにふうちゃんは並べました。
「こうやって比べてみると、アルカリで色が濃くなって、酸性で色が薄くなっているね。おじさん」
「うん。実験は成功だよ。それじゃあ、今度はこの咲いている朝顔の花びらに酸の薬品をスポイトで一滴だけ垂らしてごらん」
ふうちゃんは赤くおおきな花を咲かせている朝顔の花びらにスポイトで酸を一滴たらしました。
「あ、花びらが・・酸がついてた所だけ、色が薄く変わっちゃった。そうかぁ、酸で色がぬけたんだ」
「そうだよ。色水の実験と同じで酸で色がうすくなったんだね」
「うん。でも、酸ってすごいな」

 

左から もとの色水、アルカリの素を入れた色水 酸性の素を入れた色水
左の画像は酸性雨で色が抜けた朝顔

 ふうちゃんは感心して朝顔を見ています。
「じゃあ、ふうちゃん。今の実験でわかったことをまとめてみようか」
「うん。えと・・昨日咲いていた水玉の花をつけた朝顔は今日は普通の花が咲いていた。と、いうことは 遺伝で水玉模様になったんじゃないんだね」
「そうそう」
「今やった色水の実験でわかったことはアルカリを加えると色が濃くなって、酸を加えたら色が薄くなったんだよね。その酸を花びらにたらしたら色が薄くなったんだ。そうか、昨日の水玉模様の花びらは酸で水玉になったんだ」
「でも・・」
ふうちゃんはコペルおじさんの方へ向きなおりました。
「ねえ、おじさん。どうして酸がかかったの? だれかが『お酢』をかけたんじゃないよね」
「ははは、人がかけたんじゃないよ」
「え?」
「ふうちゃん、昨日の明け方雨が降ったのを知っているかな」
「うん。朝、お花に水を撒こうと思ったら地面が濡れていて・・その時に水玉の朝顔を見つけたんだ。すると・・・雨! そうか雨だ! 酸性雨なんだね、おじさん」
ふうちゃんは気づいたようですね。
「そうだよ。酸性雨なんだよ。花びらの色が変わってしまうような酸性雨が東京には降るときがあるんだよ」
「酸性雨って、どうして降るの?」
「それはね、都会は車などの排ガスが多いだろう。そのガスには『亜硫酸ガス』が含まれていて、それが雨に溶けて降ってきたのが酸性雨なんだ。だから空気が汚れている所の雨は植物には大変危険なんだ」
「都会の雨はめぐみの雨にはもうならないの?」
ふうちゃんはかなしそうな声になってしまいました。
「いや、人間はそんなにバカじゃないよ。車や工場の排ガスなんかには規制がでてきているし、こうやって 実験して気づく人が多くなってきているからね。少しずつ良くなっていくよ」
「植物の為にも、人間の為にもちゃんと考えていかなくちゃいけないんだね」
ふうちゃんは朝顔をみながら考え込んでしまいました。
「そうやって気づくことが大切なんだよ。さあ、ふうちゃん元気をだして!」
ふうちゃんがコペルおじさんの方へむき直りました。
あれ、ふうちゃんが何かに気づいたようですね。
「コペルおじさん、肩になにかついているよ」
よく見ると、なにやらもぞもぞ動いています。
「わっ! いも虫だ!! ふうちゃん、とってとって。おじさんいも虫だいきらいなんだよぉ!」
コペルおじさんは思いきりはたこうとしました。
「あ、だめだめ。自然を守らなきゃ。もしかしたら蝶の子供かもしれないのに!」
「うわぁ! 蝶でもなんでも、だめなものはだめなんだ! きゃー」
ふうちゃんはくすくす笑いながら棒の先にいも虫をつけて外にほおりました。
「コペルおじさんの弱点見つけた! いも虫がきらいなんだぁ」
「あ! みんなには内緒だよ」
ふうちゃんとコペルおじさんはお互いに見つめて笑ってしまいました。

 早起きは楽しいな  朝顔の実験  おわり

あとがき
 朝顔の実験のお話、いかがでしたでしょうか。まるで自由研究(笑)。実験に使った薬品や試験管 はすべて学研の教材を使用しました。ついでに酸性雨の実験も個人的にして、横浜の雨は5.1phでした。実験をしている時、なんだか小学校の時の色水実験を思い出してとっても楽しくできました。ぜひ感想を聞かせてくださいね。 

風来坊

次回予告
コペルおじさんが夏の海の仲間達と一緒に何か実験を見せてくれるそうです。いったい何を見せてくれるのかな。お楽しみに。

 
 

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