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雨の日のたのしみ かたつむりのお話

 五月も終わり、六月の最初に入り関東地方も梅雨に入りました。ちょっと前までは葉っぱばかりだったあじさいの花が雨を迎え入れるようにキラキラしながら咲いています。

 小学校四年生のふうちゃんが住んでいる所は世田谷区でもまだ自然の残っている場所で、大きなケヤキの木やいちょうの木などが茂り、雨の日など車や街の騒音が消えてまるで林の中にでもいるようです。
お友達と別れて一人で歩きながら、ふと空を見上げました。明るい空なのに粒の大きな雨がまっすぐにふりそそいでいます。大きなケヤキの木もじっとりとみじろきもしないで濡れています。すべての世界が雨で濡れているようです。
ふうちゃんはこの地球上にたった一人でいるような感じをうけました。

 しばらくすると、大学の大きな講堂の前に来ました。
「うん。あじさいの花を取っていこう」
ふうちゃんはあじさいの花から色水を作って実験をしようと考えていました。あじさいがたくさん咲いている講堂の前に来て、少しだけ花を摘みました。
「わあ、めずらしい。かたつむりだぁ」
葉っぱを裏返しにしていたらいきなりふうちゃんの手に転がってきました。
「そうだ、このかたつむりをコペルおじさんに見せてあげよう」
ふうちゃんはコペルおじさんの家へ走っていきました。

 コペルおじさんの家の前に行くと玄関の前の植え込みに傘をさしているコペルおじさんがいました。
「やあ、ふうちゃん。学校の帰りかい。おや、手にしているのはかたつむりだね」
「ただいま、コペルおじさん。さっきね、大学の講堂の前に咲いていたあじさいの花を摘んでいたらこんなに大きなかたつむりがいたんだよ。今時めずらしいでしょ」
ふうちゃんはさっきつかまえたかたつむりをコペルおじさんに見せました。
「ふーん。今時こんなに大きなかたつむりがいるんだね。そうだ、ちょっと家によっていきたまえ」
コペルおじさんがいたずらっぽく笑いながら言いました。こんな時はおじさんから面白い話が聞けるのでふうちゃんはうれしそうにおじさんの家におじゃましました。

 コペルおじさんの家に入るとすぐのあがりかまちにランドセルを置いて縁側にでました。
「ふうちゃん、きみに見せようと思っておじさんもかたつむりを捕っていたのだよ」
そう言いながらコペルおじさんは四角い透明な水槽を持ってきました。中にはおじさんの家の前に咲いているアジサイの茎と土が入っています。中には数匹のかたつむりが入っています。
「どれ、ふうちゃんのかたつむりも中に入れてみようかな」
コペルおじさんはふうちゃんが捕まえてきたかたつむりを水槽の中に入れました。
「あれ、なんだか雰囲気が違うなぁ。あ、僕が取ってきたかたつむりの殻の巻が逆だ!」
「ふうちゃんが取ってきたかたつむりはヒダリマキマイマイと言って逆に殻が巻いているんだよ。そしておじさんが取ってきたかたつむりはミスジマイマイと言ってね、ほら、全体がうす茶色で三本の筋が入っているでしょう。そこから名前をとったんだよ」
ふうちゃんはしげしげとかたつむりを眺めていました。

 しばらくかたつむりを観察しているとコペルおじさんがにこにこしながら言いました。
「ふうちゃん、おじさんはね、ハンドパワーがあるんだよ」
おじさんはいきなり凄い事を言ってきました。
「ええっ。本当に?」
ふうちゃんはビックリして聞き返しました。
「かたつむりにね、おじさんの意志を伝えることができるんだ。おじさんの命令通りに動かすことができるんだよ」
そういってコペルおじさんは用意していた白い紙とペンをふうちゃんの前にさしだしました。
「ふうちゃん、この紙に一筆書きで道を書いてごらん」
ふうちゃんは手渡された紙に外側から真ん中に行くようにぐるぐると渦巻き状の道を書きました。
「これでいいかな」
ふうちゃんはコペルおじさんにぐるぐる渦巻きの書いてある紙を手渡しました。
「うん、じゃ、用意してくるからちょっとまっていたまえ」
コペルおじさんは部屋の奥に行き、ガラスの板を持ってきました。
「いいかい。このガラスの上にかたつむりを置くからよく見ていてごらん。おじさんがかたつむりにハンドパワーでふうちゃんが書いた道と同じ動きをさせてみせるからね」

 最初はビックリしたのか、かたつむりは動きませんでした。しばらくたつと、おや、頭から角がにゅーっとでてきました。
「コペルおじさん、このかたつむり角が四本もあるよ。」
ふうちゃんがビックリしたように叫びました。
「おやおや、ふうちゃん。かたつむりの角は四本だよ。前の短い角を(前触角)というんだ。後ろの長い角が(後触角)と言って目になるんだよ。目をちょっとつついてごらん。引っ込んじゃうけどすぐにでてくるよ」
ふうちゃんはかたつむりの目をつつきました。すると縮み、すぐにもとにもどりました。
「へえ、おもしろいなぁ」
「さあ、おじさんがハンドパワーをかけるからよく見ているんだよ」
コペルおじさんはMr.マリックのように手をかざしながらハンドパワーをかたつむりに送りました。するとどうでしょう。かたつむりがだんだん内側に円を書くように動き出しました。ふうちゃんの書いた道と同じように動いています。
「うあ! すごい。本当に僕が書いた道と同じ形でかたつむりがはっている!」
コペルおじさんはハンドパワーを送るのを止めてふうちゃんに言いました。
「ふうちゃん、どうしておじさんの念力通りにかたつむりが動いたか説明できるかな?」
ふうちゃんはかたつむりをじっと見つめていました。すると、
「あ、わかった。おじさんのハンドパワーは関係ないよ。水だ。僕が書いた道と同じ図をガラス面に水で線を書いたんだ!」
「さすがだね、ふうちゃん。そうなんだ。かたつむりは水で濡れている所を通る習性があるんだよ。だからおじさんがあらかじめガラス面に筆で水の線を書いておいたんだよ」
コペルおじさんはふうちゃんにガラス板を渡しながら言いました。
「おもしろいだろう。かたつむりもそうだけど雨の日にしか活動しない動物や虫もいるんだよ。ふうちゃんも気をつけて観察してごらん。どんな事でもいいから疑問に思ったことをつきつめてみるんだよ。きっと色々な事を発見するから」
   *   *   *   *
ふと気づくとふうちゃんが来てからもう一時間もたっています。
「さあふうちゃん。お家の人が心配するからもうお帰り。その水槽はきみにあげるからかたつむりの観察日記をつけるといいよ」
「ありがとう、コペルおじさん。これ、もらっていきます」
ふうちゃんはうれしそうに水槽を抱えて雨の中をお家に帰っていきました。
「あ、ふうちゃん。あじさいの花忘れている。ランドセルも。しかたないなぁ」
コペルおじさんは笑いながらふうちゃんのあとをおいかけていきました。

  かたつむりのお話  おわり   風来坊

 
 

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