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みかん+リンゴ=フルーツ!? 数のお話

 

「だからさあ、何でそうなるの?」
「だってそうなるしかないじゃん」
「そうって、どうして?」
「どうしてって、1+1は2になるの!」

 よく晴れた秋の夕方、小学校四年生のふうちゃんが野球の練習を終えて、校庭を歩いていると、下級生らしい一年生の声が聞こえてきました。
「僕達、どうしたの? けんかしちゃだめだよ」
ふうちゃんは声を掛けました。
「けんかじゃないやい。ひろしくんがわからない事いうからだよ」
「けんちゃんがちゃんと教えてくれないから、いけないんだよ」
ふたりがまた言い合いを始めました。
「まあ、まあ。いったいどうしたっていうの?」
ふうちゃんはどうしたのか二人に理由を聞きました。
「うん、この間から不思議に思っていたのだけど、なんで1+1は2になるのって、ひろしくんに聞いたん だよ」
けんちゃんはふうちゃんに言いました。
「だって、そういう決まりなんだからしかたないじゃないの。決まりは決まり。ねえ、そうだよね」
ふうちゃんは、けんちゃんに言われてそうだと思う反面、なぜそうなのか答えられない自分に気づきました。
「まあ、いいや。けんちゃん、もう遅いから帰ろうよ」
ひろしくんとけんちゃんは走って帰っていきました。
ふうちゃんは二人を見送りながら、なんで1+1が2になるかを考えていました。
*   *   *   *   *
「それでふうちゃんはどう考えているのかな?」
 学校から帰ってきてからふうちゃんは借りていた本を返しにコペルおじさんのお家にきています。今日あったことを親戚の大学院生、コペルおじさんに話すと、おじさんはふうちゃんに質問したのです。
「うん、僕も解らないんだ。だって、1+1は2というのは決まりで、なぜなんて考えたことがなかったん だもの」
ふうちゃんはちょっと困った顔をしました。
「ふーん」
コペルおじさんは吸っていたタバコを煙草盆に乗せて、ちょっと考えてからふうちゃんに質問しました。
「じゃあ、ふうちゃん。時計を見てごらん。長針と短針があるよね。長針はぐるっと一周するとどうなる?」
「うん、59分の次は60分で、それが次の時間の0分だよ」
ふうちゃんはコペルおじさんの書斎の時計を見ながら答えました。
「そうだね。1分から始まって60分になると、また0分から始まる。短針がいち進むんだよね。これは 『60進法』と言うんだよ。それじゃあ、さっきの1+1という数の世界は何進法かな?」
「それは簡単だよ。0から始まって9になって、その次は十の位が1になってまた1から始まるんだよね。 だから10進法だよ」
ふうちゃんはすらすらと答えました。
「ほら、解っているじゃないの。1と1があって、それが足されると次の2になる。でしょ」
「あ、そうか。順番なんだね、普通に考えればいいんだね」
「そうだね」
 コペルおじさんがちょっと笑いながら質問してきました。これは何かおもしろい話が聞けるようです。
「ところでふうちゃん、ここにみかんが3個とリンゴが2個あるね」
書斎の大きな机の前に、応接セットがあり、その上の大きなお皿の上にミカンとリンゴが乗っています。
「この、ミカン3個とリンゴ2個、たしたらいくつになる?」
「うん、ミカン3個とリンゴ2個でしょ。3たす2は5だよね。答えは5個だよ」
「本当にそうかい?」
コペルおじさんはふうちゃんの顔をまじまじと見ながら言いました。
「え…だって、3たす2は5じゃないの」
「じゃあ、そのミカンとリンゴを足した答えの単位は何になるのかな?」
「え…」
ふうちゃんはちょっと考えてから、
「個でしょ?」
と答えました。
「じゃあ、5『個』として、こう言ったらどうなるかな」
コペルおじさんは続けて話しました。
「お皿上にミカンとリンゴがあり、ミカンとリンゴを足した数は5『個』になります。さて、ミカンは何個 でリンゴは何個あるでしょうか」
「そんなのずるいや、ミカンか、リンゴの数が解らないと個々の数なんて解らないよ」
「じゃあ、こういう風に単位を付けたらどうかな。5(3ミカン,2リンゴ)」
「うん・・それならいくつとわかるけど……ちょっと変だなぁ」
ふうちゃんは納得できないようです。
「こう考えたらどうかな。ミカンとリンゴの共通点ってなんだと思う?」
コペルおじさんはふうちゃんに言いました。
「たべもの…フルーツかな」
ふうちゃんはコペルおじさんの顔を見ながら言いました。
「ミカン3個とリンゴ2個を足したら5フルーツ。これはいいね。さっきの『個』より 『フルーツ』のほうが単位としてびったしだけど、なんでだと思う?」
「うん。それはミカンとリンゴの共通したものを単位としたからで、さっき僕が計算した答え『5個』はミカンとリンゴを数字に置き換えて考えただけで、品物として考えたら同 じじゃないからだめなんだ・・あれ、これってさっき僕が言っていたことの逆になっちゃった」
「そこなんだよ。じゃあ、もう一度聞くけど、ミカン3個とリンゴ2個をたしたらいくつになる? 単位は 『個』だとしたら?」
ふうちゃんはちょっと考えて答えました。
「ミカン3個とリンゴ2個を足すと…5フルーツだけど…単位が『個』だから…あ、もしかして、み かん3個足すリンゴ2個は、ミカン3個とリンゴ2個じゃないかしら」
「大正解! ミカンとリンゴは決して同じものではないので、『たせない』のだよ。いいかい、たすことの できるものは、たすもの、たされるのもが同じもの、同じ単位のもでなければいけないんだよ。ふうちゃん も学校で分数をならっているだろう。あれだって、分母を同じにしないと足したり、引いたりできないだろ う」
「あ! そうか」
ふうちゃんも気づいたようですね。
「だから、ミカンとリンゴの共通するものを単位として、これを共通項って言うんだけど、この場合『フルーツ』だね。これを単位にすれば足すこ とができるんだよ」
コペルおじさんは紙とペンを持ち出しました。
「いいかい、ここに今言ったミカンとリンゴの関係を図にしてみようか」
「まず、ミカン3個を書きます。それとその右側にリンゴ2個を書きます。上に『ミカン』、『リンゴ』っ て書いて、そう、分かりやすく線で囲ってみようか」
コペルおじさんは紙にミカン3個とリンゴ2個の絵を書いて、それぞれを丸で囲みました。
「この、ミカンとリンゴの単位はなんだっけ? ふうちゃん」
「うん、フルーツだよね」
「そうだね。そうしたらこの図、全部をフルーツとして囲むことができるね」
そう言って今書いた図を大きく囲む丸をコペルおじさんは書きました。
「これにも『フルーツ』って言う名前をつけようね」
ふうちゃんはコペルおじさんが書いてくれた図を見ています。
「ねえ、おじさん。これと同じ内容でもう一つ図か書けるよ」
そう言ってふうちゃんは紙に図を書き出しました。
「ほら、ミカン3個とリンゴ2個をべつべつの線で囲って…、同じようにミカンとリンゴの図を一つの線で囲むの。それをフルーツにするの。これでどう? 同じ意味の図にならないかな」
ふうちゃんは書いた図をコペルおじさんに見せました。

「うん、ふうちゃん。良い図を書いたね」
コペルおじさんはにこにこしながらふうちゃんを見ています。
「でもね、ふうちゃんが書いた図によると、フルーツが、ミカン、リンゴの中に含まれている事になるよね。それじゃ、逆にフルーツに含まれないミカンやリンゴがあるのかな?」
「あ…、そうだね。なんか変だなぁ」
ふうちゃんは考え込んでしまいました。
「ふふふ、じゃあ、教えてあげようね。ふうちゃんが書いた図は『ふくむもの』、『ふくまれるもの』の意味を勘違いしているのだよ。ほら、さっき言ったじゃないの、ミカンとリンゴの共通項は何かってね。ふうちゃんの書いた図ではミカンやリンゴと同じレベルでフルーツがあることになっちゃうけど、さっきの計算の時の単位は『共通項』としてフルーツを扱ったのだからミカン、リンゴ全てを含まれるように書かなきゃいけないんだよ。だからおじさんが書いた図は全部をまとめて『フルーツ』で囲んでいるのだよ。ミカンとリンゴとフルーツは対等じゃないんだよ。解るかな」

 ふうちゃんはじっと二つの図を眺めています。
「なるほど! 解った! それにしても数って面白いね」
どうやらふうちゃんも納得したようです。
「ところでもう一つ、クイズをだそうか」
コペルおじさんが言いました。
「ここにあるお皿の上からリンゴを二つ取りました」
コペルおじさんは言いながらリンゴを取り、一つをふうちゃんへ投げてわたしました。
「がぶり…しゃり、しゃり」
コペルおじさんがリンゴをかじり出しました。
「さて、残りはいくつ?」
ふうちゃんも真っ赤に熟したリンゴをほおばりながら言いました。
「ええと…、単位は何かな」
「『おいしい』、にしようか」
もう一口ほおばりながらふうちゃんがいいました。
「チーン! 計算結果がでました! 『すべて(おいしい)』かな」
ふうちゃんとコペルおじさんはリンゴをほおばりながら笑いだしました。

  『数のお話』  おわり 

風来坊
 共通単位と共通項は小学校4〜5年生の算数で習う内容です。(旧課程)

 

 
 

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