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夜空を眺めてこらん 月の話その1

 「コペルおじさん、今日の野球楽しかったね。阪神勝ったしね! それにしても今日はとっても星がよく見えるね」
コペルおじさんと野球を見に行った帰りに夜空を見ながらふうちゃんが話します。
「やあ、月がとっても綺麗だね」
二十三日は満月の前夜なので、良くはれた空にほとんどまん丸の月が美しく輝いています。
「月ってさ、自分で光っているのではなくて太陽の光を反射して光っているんだよね」
しばらく二人は月や宇宙について話していましたがふとコペルおじさんが気づいたようにたずねました。
「ふうちゃん、君は月の大きさを知っているかい?」
ちょっと考えてからふうちゃんは答えました。
「正確な大きさはちょっと忘れちゃったけど、月食の時に地球の陰が付くぐらいだから結構大きいよね。もちろん地球より小さいけど」
「うん、もちろん地球より小さいけど、でも、直径三千四百何十キロという、でっかいものだよ。ところでふうちゃん、一つ面白い実験をしてみようか」

 コペルおじさんがいたずらっぽく笑いながら言いました。おじさんがそういう笑い方をして話すときはだいたい面白い話が聞けるのでまちかまえるようにコペルおじさんの顔を見ました。
「とっても大きいのだけど、あんまり遠くに離れているので小さく見えるのだよ。ところでどのくらいの大きさに見えるかな? バスケットボールかな、それとも野球のボールぐらいかな」
「バスケットボールほど大きくないや、でも、野球のボールほど小さくないしね。僕はソフトボールの大きさ位じゃないかと思うけど」
そんな話をしているうちにコペルおじさんの家に着きました。
「おいしいケーキがあるんだけど、さっきの話の続きもあるからちょっと寄っていきたまえ」
ふうちゃんはコペルおじさんの家で喜久家のケーキをごちそうになりました。
「ところで、さっきの話の続きなんだけど一つ面白い実験をしてみよう」
 コペルおじさんはそう言って書斎から画用紙を持ってきました。その画用紙をくるくると丸めて長さ50cm、直径3cmほどの細長い筒をこしらえました。

「ふうちゃん、これで月を覗いてごらん」
そこで、ふうちゃんはコペルおじさんが作った細長い筒を目に当てて月をのぞきました。しばらくのぞいていて、筒から目を離して不思議そうな顔をしました。
「はは、不思議そうな顔をしているね。どうだい、ぱっやりソフトボールと同じ大きさに見えたかい?」
「いいえ、なんだか小さくなってる」
「じゃ、こうしたらどうかな?」
コペルおじさんは画用紙で作った筒をさらにくるくる丸めて直径を1cmぐらいにして、ふうちゃんに渡しました。
「さあ、これでもう一度月を覗いてごらん」
ふうちゃんは言われるままに月を覗きました。
「あれ、変ですね。もっと小さくなっちゃった。筒の半分ぐらいの大きさかな?」
「ふふふ。それじゃ月の大きさと同じぐらいになるように筒を丸めてごらん」
ふうちゃんは筒の先を丁度漏斗のように小さく丸めながら月を覗いています。おや、だいぶ小さい穴の漏斗になりました。
「あれ、月の大きさに合わせたら3mmぐらいの穴になっちゃった!」
「ははは、驚いたかい。最初ソフトボールの大きさだと思っていた月がじつは米粒ぐらいの大きさになってしまったね」
「なにかこの筒に仕掛けがあるのですか?」
「いいや、画用紙で作ったただの筒だよ。こんな筒を使わなくても簡単に実験できるよ。ふうちゃん、目から50cmぐらい離れたところに手を持ってきて親指と人差し指で月の大きさをはかってごらん」
ふうちゃんは言われたとおりに親指と人差し指で月の大きさを測りました。
「おや、やっぱり筒の時と同じ3mmぐらいになりました」
「それじゃ、今度は手をいっぱいに伸ばして同じように月をはかってごらん」
言われるままにふうちゃんははかりました。するとどうでしょう、指の間は5、6mmになって、月が豆粒ほどに大きくなりました。
「さあ、これで実験はすんだよ。ふうちゃん、いったいどうして月の大きさがこんなに変わるのか説明できるかい?」
ふうちゃんはしばらく目をくりくりさせながら考えていました。しばらくすると何か良い考えが浮かんだと見えて、ぱっと顔が明るくなりました。

「コペルおじさん、解りました。これはなんでもないことなんです。目に近い物は大きく見えて、遠くに見える物は小さく見えるということなんですね」
ふうちゃんは少し興奮しながら続けました。
「たとえばここから少し離れた所に花瓶がありますよね。この花瓶を同じように目から10cmぐらいのところで測ると親指の長さと同じぐらいですが、目から距離が離れるとだんだん大きくなっていきます。目に近い物は大きく見えて、遠くなると小さく見える。こういう事じゃないかしら?」
「正解! すばらしいね。良く自分で考え出したね。僕の通っている大学の学生でもそんなにうまく説明できる人いないよ。考えてみたら何でもないことだよね。でも、その何でもないことをよくよく考えてみることが大事なんだよ」
ふうちゃんはうれしくてちょっと興奮しています。
「さあ、もう遅いからお帰りなさい」

 もうすっかり暗くなった道をコペルおじさんと一緒に歩いています。いつも歩いている道ですが、今日はなんだか違って見えます。

「コペルおじさん、本当に月って不思議だね。歩いているとついて来るみたいだし、時間がたつと大きさが変わるし」
「おや、ふうちゃん。本当に月の大きさが変わると思っているのかい」
コペルおじさんはふうちゃんの顔をまじまじと眺めました。
「じゃ、ふうちゃんに宿題をだそうかな。なぜ月は出始めはあんなに大きいのに頭の上までくると小さくなるのか。次に会うまでちょっと考えてごらん」
そう言ってふうちゃんの家までおくったコペルおじさんは帰って行きました。

 さて、みなさんはふうちゃんにだされた宿題の答えが解りますか? みなさんもふうちゃんと一緒に考えてみてください。

  つづく

 参考文献 知恵の一太郎 江戸川乱歩著   風来坊

 
 

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