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コペルおじさんの科学教室 その1

 

 九月のある日曜日、小学校四年生のふうちゃんのお家に学校のお友達が遊びに来ています。
メンバーはこの夏に泊まりがけで海に行ったメンバーで、今日子ちゃん、千香ちゃん、典生くん、まりおくんの四人です。
 
  みんなは一階の広間でTVゲームをしています。
熱心にモニターを見ている後ろでにこにこしながらコペルおじさんが立っていました。
「あ、コペルおじさん、来ていたんだ。気がつかなかった」
みんなも気づいたようです。
コペルおじさんはふうちゃんのおじさんに当たる人で、ふうちゃんがおにいさんのように慕っている人です。
お家の近くに住んでいるのでよく遊びに来ます。
「あ、おじさんこんにちは」
「こんにちは、おじゃましています」
みんながコペルおじさんに挨拶をしました。
「おじさん、今日はどうしたの?」
ふうちゃんは聞きました。
「うん。今日はね、みんなで行った海の写真ができたので、見せようと思って来てみたんだよ」
「わあ、海の写真! 見たい見たい!」
みんながコペルおじさんの周りにあつまりました。
「じゃあ、こっちで見ようか」
コペルおじさん達はTVのある広間から奥の居間に移りました。
 みんなは海の写真を見ながら騒いでいます。一通り夏の思い出の話で盛り上がりました。
「コペルおじさんと千香の星の話、とっても良かったわ。私、家に帰ってから星ばかりみていたの。でも都会の空って明るいのね、屋上に上がって観察したのだけど、あまり見えなくて残念だったわ」
今日子ちゃんはマンションに住んでいるのですが、あまり星が見えないようです。
「おれはやっぱり寒暖計の実験がおもしろかったなぁ。学校でやったけど、先生も感心してたよ」
「てんちゃん、まるで自分が考えたような言い方するのだもの、おかしくなっちゃった」
まりおくんがわらっています。
「まあ、いいじゃない。それよかおじさん、なにかおもしろい実験ってほかにないの?」
てんちゃんが聞きました。
みんなも「そうそう」っていう顔をしています。
「コペルおじさん、前に僕にしてくれたようなおもしろい実験、なにかみんなの前でみせてくれない? 僕、とっても楽しかったし、このあいだの朝顔の実験も学校で話たらみんな興味もったみたいだしね」
「そうそう、わたしもその朝顔の実験、やってみたかったわ」
千香ちゃんが言いました。 コペルおじさんはちょっと考えてから言いました。
「そうだね……それじゃ、来週の土曜日。学校がひけたらみんなでおじさんの家にきたまえ。実験というほどじゃないけど、みんなでなにかやってみようか」
「わーい。やろうやろう」
みんな、今度の土曜日が待ち遠しくなりました。

* * * * 

 次の土曜日、学校がひけるとみんなふうちゃんのお家に集まり、コペルおじさんのお家に向かいました。
「ねえ、ふうちゃん。おじさんって何をやっている人なの?」
てんちゃんが聞きました。
「うん、大学院でなんか化学の研究をしているらしいけど、僕、よくわからないや」
「ふうん」
話をしながら歩いていくと、コペルおじさんのお家につきました。
「こんにちは!」
玄関でふうちゃんが大きな声をだしました。
「やあ、いらっしゃい。みんなそろっているね」
「よろしくおねがいしまぁす」
「それじゃ、出かけようか」
「えっ、出かけるって、いったいどこに行くの?」
ふうちゃんは聞きました。
「うん、おじさんの家で実験するより、もっと都合の良い場所があるんだよ。そこで実験をしようと思うんだ」
みんなは歩きながら話しています。
「ねえおじさん、どこにいくつもりなの?」
てんちゃんが聞きます。
「おじさんが通っている大学院の研究室がここから近いのでそこでやろうと思ってね」
「へえ、大学でやるんだ! ラッキー」
てんちゃんとまりおくんがよろこんでいます。
「どんな実験をするのですか」
千香ちゃんが興味を持って聞いてきました。
「ふふふ、それはあとのお楽しみ」
  みんなが話しているとすぐに研究室に到着しました。ふうちゃんがコペルおじさんの研究室に来るのは今度が三度目になります。でも、建物の中には入ったことが無く、ふうちゃんも中に入れるのを楽しみにしていました。

 正門の左側に守衛さんがいて、コペルおじさんがその守衛さんと話をしてから、しばらく砂利道を歩くと左側に大きな三階建ての古めかしい研究室が見えてきました。 研究室の真ん中にある入り口から入ると左側に会議室や教室、右に化学室、実験室、正面にロビーがあります。ロビーにはジュースの自動販売機とテーブル、イスがあります。
おや、女の人がいますね。

「あら、将さんこんにちは。今日はかわいらしい子ども達と何をするの?」
「やあ、萌ちゃん、今日は。みんなと科学の実験をしようと思っているんだよ」
「おじさん、おじさん」
ふうちゃんがコペルおじさんの袖をひっぱりました。
「コペルおじさん、このお姉さんはだれですか」
「あら……ふうちゃん……かしら、この間海の写真を見せてもらったわ」
「………」
「ははは、じゃあ紹介しようかな。こちらのお姉さんはね、隣の物理研究室の研究生、高井萌さん」
「そして、ここにいるメンバーが世田谷お騒がせ軍団。こちらがふうちゃん」
「こんにちは、萌さん」
「こんにちは、ふうちゃん。将さんからよく聞いているわ」
「そして、こちらがふうちゃんと同じクラスの今日子ちゃん、千香ちゃん、典生くん、まりおくん。みんなとっても仲良しなんだよ」
「みんなよろしくね」
「よろしくお願いします」
「ところで萌ちゃん、なんでこんな所にいるの? 今実験じゃなかった」
「ちょうど休憩なの。物理研のみんな、私をおいてどこかにいっちゃって……そろそろ将さんが来る頃じゃないかと待っていたのよ」
コペルおじさんと萌さんは仲がよいらしいです。
「気分転換でわたしも実験に参加してもいいかしら」
「そうだね。みんな、いいかな」
「うん! やろう、やろう!」
みんな賛成のようです。
「よし。じゃあ、この奥の化学室で実験をしようか」
みんなで実験室の方へいきました。 萌さんがコペルおじさんに近寄って話しかけてきました。
「ねえ、将さん。みんなから『コペルおじさん』って呼ばれているの?」 萌さんが尋ねてきました。
「えっ……まあね」
「コペルはコペルニクスからとったのね。でも『おじさん』ねぇ……くっくっくっ」 萌さんは笑い出してしまいました。
「もう、いいの! 萌ちゃんだって『おばさん』だよ」
「あら、私はちゃんと『お姉さん』って呼ばせます!」
「はははは」
ふうちゃん達とコペルおじさん、物理研究室の萌さんは化学室へと入っていきました。

* * * *

 化学室は学校の理科室と同じような作りで、二つの六人用の机をはさんでシンクと水道、バーナーなどが真ん中に集まっています。ふうちゃん達は一番前の机につきました。
「それじゃ、始めようか。今日の実験は隣同士でペアを作って実験してください。ふうちゃんと千香ちゃん、今日子ちゃんとてんちゃん、まりおくんは萌ちゃんと実験してください」
「まりおくん、よろしくね」
「こ、こちらこそお願いします」
まりおくんは少し緊張しています。
「実験を始める前にみんなと約束だけど、これから色々な実験道具や薬品を使うけど絶対にふざけたりしないように。実験は楽しいけど、危険なこともいっぱいあるからね。もし、危険なことをしたりふざけたらその時点で中止にするからね。みんな、約束できるかな」
「約束するよ、おじさん」
ふうちゃんが言いました。
「ふざけたりしたらおいらがゆるさないぞ!」
てんちゃんが言いました。
「あのね、てんちゃんが一番あやしいんだよ」
まりおくんが言いました。
「あ! まりお! 」
「まあまあ、みんな気を付けてくれればいいからね。それじゃ、始めようか」


実験用具

「まず、原料の説明からするね。薬品として使用するのは『PVA』と言ってポリ・ビニル・アルコールとホウ砂(ほうさ、四ホウ酸ナトリウム)、これはホウ酸だね。この二つの薬品を使います。みんな、これは何かわかるかな?」
コペルおじさんはのりを持っています。
「それ、のりでしょ。透明なタイプの」
「そう。これはどこの家にでもあるのりだね。この主成分がPVAなので、ここから取り出します。それと、もし家で実験しようとするなら必ず『PVA』または『PVAL』と表示しているのを確認してください。『PVAc』(ポリ酢酸ビニル)と表示しているのは使えないからね。ほら、ここに『主成分PVAL』って書いてあるでしょ。これを使います」
「それと実験結果を発展させて遊ぶ材料がこれ、水彩絵の具、スチールウール、磁石などだね。これの使い方はその都度説明します」
コペルおじさんはたくさん並んでいるビーカーを指さしながら言いました。
「それじゃ、まず実験を始める前の準備として原料を作ります。ここにビーカーがあるので各グループで六個ずつ持っていってください。それと薬さじ、かくはん棒。ビーカーの一つに水を入れて用意してください。いいかな」
みんなビーカーと水を用意しました。
「それじゃ、おじさんが言う通りに始めてください。まず、この『のり』を四つのビーカーに薬さじの大きい方で一杯ずつ入れてください」 それぞれ四つのビーカーに一杯ずつのりを入れました。
「なんだか『水飴』みたいだね。なめたら甘かったりして」
てんちゃんは言いました。
「もう、てんちゃんは食べることばっかり! でも、似てるわね」
てんちゃんと今日子ちゃんはお腹がすいているようです。

    
各ビーカーに決められた量のノリを入れる   決められた分量の水を入れてよくかき混ぜる

「その四つのビーカーを並べて左からA,B,C,Dと名付けます。Aのビーカーには水を入れません。Bのビーカーに薬さじの大きい方で半分の水を入れてよくかき混ぜてください」
「そうしたらCのビーカーには薬さじ一杯の水を入れてかき混ぜ、Dのビーカーには薬さじ二杯の水を入れてかき混ぜます。それぞれ1分ぐらいはかき混ぜてください」
みんな一生懸命かき混ぜています。
「この、のりが水に溶けることを言い換えると、 『液体、または固体の物質がほかの液体と混ざり合って均等な状態になる』と言って、このことを『溶解』と呼ぶんだよ」
「どうだい。みんなできたかな」
ぐるぐるかき回してねっとりしていますね。みんなちゃんとできたようです。

「それじゃ、今度は『ホウ砂』の飽和水溶液を作ります。いいかな。何も入ってないビーカーに水を4分の1、だいたい50mlぐらいだね、入れてください。そうしたら、ホウ砂を、薬さじ一杯を水に加えてください。あ、今水を入れたビーカーにいれるんだよ」
てんちゃんが何も入っていないビーカーにホウ砂を入れてしまいました。
「もう、てんちゃん! ちゃんとコペルおじさんの話を聞いていなくちゃだめよ」
「ちぇ、今日子はうるさいんだから。ちょっと間違えただけなのに」
「ははは、てんちゃん。大丈夫だよ。今入れたホウ砂を水が入ったビーカーに移せばいいから」
コペルおじさんはてんちゃんに水しか入っていないビーカーを渡して言いました。
「さあ、よくかき混ぜてね。アイスコーヒーにガムシロップを入れた時みたいにかくはん棒の下を小刻みに動かして、底の方でよくかきませてください。全体が白くなったらしばらく置いておきます」
「おじさん、なんですぐに使わないの? 全体に白く濁っているときに使わないと均等に溶けてはいないんじゃないの?」
まりおくんが質問してきました。
「いい質問だね。今回のホウ砂水溶液は『飽和水溶液』と言って、もうそれ以上は溶けきれなくなった状態の水溶液を使うんだよ。だから溶け残りが下にしずむまで待っているんだよ」
「なるほどね。解りました」
まりおくんが言いました。

      
    ホウ砂を水に溶かす        溶け残るまで溶かし、飽和水溶液をつくる

「でも、これでいったい何ができるのだろう……」
「ねえ、ふうちゃん。これで何ができると思う?」
ふうちゃんと千香ちゃんが話しています。みんな、何が出来るか興味津々ですね。
  しばらくして、ホウ砂の水溶液もできたようです。 AからDまでの『のりを水でとかした水溶液」、『ホウ砂飽和水溶液』がみんなの机の上に用意されました。
「じゃあ、原料もできたし、さっそく本体を作ろうか」  

さて、コペルおじさんはいったい何を作ろうとしているのでしょうか?

 おじさんの科学教室 その1 終わり  その2に続く

次回予告
 
のりの水溶液とホウ砂の飽和水溶液。これで何が出来るのかな? みなさんも考えてくださいね。

 

 
 

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