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冷たい風と暖かい風 ふうちゃんの夏休み その1

 七月に入り、みんなが楽しみにしていた夏休みがきました。
太陽はぎらぎらと輝き、四月に種を蒔いた朝顔や向日葵も元気良く咲いています。八月に入って、ふうちゃんはなかよしの学校のお友達とふうちゃんのおうちの葉山の別荘に泊まりがけで海水浴に来ています。もちろん子供同士だけではおうちの人が許してくれません。ふうちゃんは近所に住む親戚の大学院生、コペルおじさんにたのんで一緒に来てもらいました。
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 学校ではなかよし五人組で通っているメンバーを紹介します。
今日子ちゃんはふうちゃんのクラスのクラス委員をしています。いつも明るく元気で、スポーツでも学校のバスケットボールチームのキャプテンも務めています。
典生くんはクラスの中でも一番の力持ちです。野球が大好き。巨人が好きで、これについては阪神ファンのふうちゃんといつも言い合っています。学校の野球チームに入っていて、典生くんがキャッチャーでふうちゃんがピッチャーをしています。とっても息が合っていますよ。頑固だけどもとっても気がいい人です。 みんなからはてんちゃんと呼ばれています。
まりおくんはゲームが大好き。ふうちゃんはクリアできないゲームのエンディングをいつもまりおくんに見せてもらっています。バイオハザードをナイフクリアできるほどうまいですよ。理科と算数が得意です。
千香ちゃんは学校の図書委員をしています。いつも本を読んでいてとっても物知り。花や虫などをよく知っています。とってもおとなしい子なんですが花や虫を捕まえる時は意外と行動派になります。
このメンバーにふうちゃんを加えたのが仲良し五人組です。学校では先生に「世田谷ジュニア探偵団」と呼ばれています。前に一度学校で起きた事件を解決したことがあるのです。その話はまた次回にして、ふうちゃん達のおはなしをすすめましょう。
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 ふうちゃんのお父さんが所有している葉山の別荘は海を見渡せるちょっとした岬の上にあります。横の道を降りるとすぐに砂浜で海にでられます。ほとんど人がいないのでプライベートビーチのようです。別荘の裏手をちょっと行くと林から裏山へ続く道があります。
とても静かでセミの鳴き声がこだまのように鳴り響いています。
「わあ、これがふうちゃんの別荘なんだ。すごいね! あ、駐車場にバスケットのリングがある」
今日子ちゃんは車を降りるとすぐにバスケットのリングを見つけました。
「海がすぐ近くなんだね。早くおよぎたいぜ」
てんちゃんは荷物を下ろすとすぐに準備体操をしています。
「ふうちゃん。ここにはパソコンはあるの?」
ふうちゃんはにっこりほほえんで言いました。
「もちろん! まりおくんの大好きなTVゲームだってあるんだよ」
「おーっ」
みんなが歓声をあげました。
「のろいのビデオもあったりして」
「やだぁ!」
今日子ちゃんは結構怖がりらしいです。
 別荘の正面真ん中に大きな玄関があります。その玄関を背中にして見ると目の前に噴水があり、その向こう側すぐの所に海が広がっているように見えます。素晴らしい景色です。二階建ての別荘は一階に広いリビング、食堂があり、階段を上ると各部屋があります。二階の大きな広間からベランダにでると目の前に海が広がっていて海のさわやかな風がほおに気持ち良いです。
 みんなでこの別荘の管理人さんに挨拶をして、ふうちゃん達は水着に着替えて、一階のリビングに集まりました。コペルおじさんがみんなにこれからの共同生活について注意をしています。

「いいかい、ここはみんなで共同生活をするところなんだよ。だから決まりを守って、何かがあったらすぐにおじさんの所へきなさい。あとは君たちの自由だ、今年の夏の一番楽しい思い出を作りなさい。あんまりはめをはずさないようにね!」
コペルおじさんはみんなに言いました。
「はーい。おじさん、これから三日間よろしくお願いしまーす」
みんなの明るい声が重なり合いました。
「さあ、海へいこう!」
コペルおじさん、ふうちゃん達は別荘の横を通って砂浜へ降りていきました。
*   *   *   *
  太陽はかがやきをましてみんなの上からふりそそいでいます。遊び疲れたみんなが砂浜に集まってきました。
「面白かったね、てんちゃん」
二人が話をしていると、今日子ちゃんとコペルおじさんがかき氷を持ってこちらにやってきました。
「みんな、さしいれのかき氷よ。好きなのをとってね」
今日子ちゃんとコペルおじさんの手からみんな、それぞれにかき氷をとりました。
「うーん。つめたーい」頭に手を当ててまりおくんが顔をしかめています。
「わあ、風がさわやかだね。なんだかすごく涼しく感じるな」
てんちゃんが言いました。
「うん、そうだね。日に当たっているけど風が吹くととっても涼しいや。だけど、こんなに暑いのに風が吹くと何で涼しくなるのだろう?」
ふうちゃんは不思議に思いてんちゃんに聞きました。
「たぶん、風が吹くとその当たった場所の温度が低くなるからじゃないかな?」
「うん・・そうだね・・」
ふうちゃんはまだ疑問に思っています。
「うーっ、頭がキンキンするぅ!」
てんちゃんが頭をかかえています。砂浜を眺めていたふうちゃんが、てんちゃんに聞きました。
「ねえ、てんちゃん。さっき風が当たると温度が下がるって言っていたよね」
「うん。風が吹くと当たったところが涼しく感じる。だろ」
「そうだけど・・じゃ、なんで砂浜はこんなに風が当たっているのに足を乗せると焼けるぐらい熱いのかな?」
「それは全体に均等に風が当たらなくて部分的だから、温度の低いところは高いところの温度が流れるでしょ。だからあついのじゃないかしら」
今日子ちゃんも話に加わってきました。
「あー、もういいじゃない! さあ、かき氷も食べたし、泳ごうぜ!」
てんちゃんが立ち上がってふうちゃんに催促しました。
「そうだね、てんちゃん。よし、あそこの岩まで泳ぎの競争だ!」
ふうちゃんとてんちゃんは勝負をしに泳ぎにいきました。まりおくんと千香ちゃんに今日子ちゃんが加わって波打ち際に走っていきました。コペルおじさんはにこにこしながらその風景を見ていました。
*   *   *   *
 楽しい時間は瞬く間にすぎさっていくものです。さっきまであんなに高い所からさしていた日差しも、だいぶ傾いてきました。黄金色に輝いていた太陽も赤みをまして水平線のかなたへ沈もうとしています。ふうちゃん、てんちゃん、まりおくん、今日子ちゃん、そして千香ちゃん。みんなうっとりしながらこの暮れていく風景を眺めています。
「さあ、別荘に帰ろうか」
コペルおじさんが言いました。
「あー、おなかへった!」
てんちゃんとまりおくんが同時にいいました。
「もう、くいしんぼうなんだから」
今日子ちゃんが笑いながらいいました。
「ぐうぅぅぅ」
「やだ!」
「なんだ、今日子ちゃんだっておなかがすいているんじゃん!」
みんな笑いながら別荘へと帰っていきました。
*   *   *   *   
  別荘に帰ると食堂からいい匂いがただよってきます。
「さあ、みんな。食事の前にお風呂にはいりなさい」
「男の子は二階のお風呂で、女の子は一階のお風呂を使いなさい」
コペルおじさんが言いました。
「てんちゃん、のぞかないでよ!」
「あ! お子さまには興味ありません!」
「やだ! 失礼ね! レディに向かってその言葉」
今日子ちゃんと千香ちゃんがふくれています。
「ははは、大丈夫だよ。男の子はおじさんと一緒に入るから」
みんな楽しそうにお風呂に入りに行きました。

 お風呂から上がり、一階の食堂にみんなが集まり楽しい食事は済みました。
二階の広間にみんながあつまっています。ベランダにつづく窓が全開していて、昼間の暑さはどこへやら、さわやかな風がレースのカーテンをゆらしています。夜空は星が降るように輝いています。みんなは寝ころんだり、おしゃべりをしたりして、思い思いに楽しんでいます。
「そういえば君たち、今日の昼間、海辺で話していた事覚えているかな」
コペルおじさんがふうちゃん達に話しかけてきました。
「おじさん。それって、風が当たると涼しく感じるのはなぜか? でしょ」
ふうちゃんが言いました。コペルおじさんはいたずらっぽく笑いながら言いました。
「そうそう。そのことでみんなにちょっとクイズをだそうと思うんだ」
みんなは顔を見合わせました。
「さっきの問題は海から上がって風が吹くとなんで涼しく感じるかだよね」
「うん」
「まず、みんなの意見を聞いてみようかな。ちょっと時間をあげるからみんなの意見をまとめてごらん」
ふうちゃん達はいろいろ話をして答えをだしました。
「おじさん。僕たちの考えは風が吹くから涼しくなるに決定したよ。弱く吹くと少し涼しくなって、強く吹くともっとすずしくなる。なんだけど・・」
コペルおじさんはみんなの顔を見渡して言いました。
「つまり君たちの言うことは、風が体の熱を奪って涼しくなる。ということだね」
「うん」
みんなはうなずきました。
「それじゃ、おじさんからクイズをだそう」
コペルおじさんは壁から寒暖計をはずしてみんなの前に持ってきました。
「よく見たまえ。この寒暖計はいったい何度をさしているかな」
おじさんはふうちゃん達に寒暖計を差し出しました。
「おじさん、26度だよ。結構涼しいんだな」
まりおくんが率先して答えました。
「じゃ、君たち、この寒暖計の一番下のアルコールのたまっているところ。すなわち温度を測るところだけど、ここに強く息を吹きかけたら、いったいこの寒暖計の温度は上がるかな、それともさがるかな」
「そんなの簡単だよ」
てんちゃんが言いました。
「だって風が吹くと涼しくなるのだから、温度は下がる。だよ」
みんなはてんちゃんの顔を見ています。
「みんなの意見はどうかな? ほかにある人?」
みんな黙って顔を見合わせています。
「それじゃ、実験してみようか。ふうちゃん、きみがこの寒暖計を持ちたまえ。さあ、てんちゃん、寒暖計に息を吹きかけてごらん」
ふうちゃんの持っている寒暖計にてんちゃんが勢い良く息を吹きかけました。
「ふーっ」
みんなの目が寒暖計の目盛に集中しています。
「あ! 温度が上がったわ!」
今日子ちゃんとまりおくんが同時に言いました。
「なんで? ねえ、おじさん。なんで温度が上がるの?」
ふうちゃんも尋ねてきました。
「うん、寒暖計のメモリは上がったね。それじゃ、息を吹きかけても涼しくはならないってことだね。じゃあ、みんな。自分の腕に息を吹きかけてごらん」
コペルおじさんはみんなに言いました。みんなは自分の腕に「ふーっ」っと息を吹きかけています。
「あれ、今度は冷たく感じる!」
みんなも不思議な顔をして自分の腕に息を吹きかけています。コペルおじさんだけがにこにこしています。
「今の二つの実験と海の話でわかったことは何かな」
コペルおじさんはみんなに問いかけました。
「うん、寒暖計に息を吹きかけると温度があがる」
ふうちゃんが言いました。
「腕に息を吹きかけたときは逆に冷たく感じる」
てんちゃんが言いました。
「それと、海から上がって風に当たると涼しくなる。もあるわ」
今日子ちゃんも言いました。
コペルおじさんはまりおくんに聞きました。
「まりおくん、今の話でなにか気づいたことはあるかな」
まりおくんは少し考えてから言いました。
「うん。海から上がった時と、腕に息を吹きかけたときは表面に水分があって、温度計にはなかった。かな?」
「大正解!」
コペルおじさんはうなずきながら言いました。
「そうか! 海から上がったときは海水が体についていて、風に吹かれると水分が蒸発してその時に体の熱を奪っていってしまうんだ!」
ふうちゃんが膝をたたいて言いました。
「でも、息を吹きかけたときは何で涼しくなるの? 水はついていないよ」
てんちゃんが聞きました。
「それは体には汗があるからじゃないのかな、ねえおじさん」
まりおくんがコペルおじさんに聞きました。
「まりおくんとふうちゃんが言ったとおりだよ。体についた水や汗が風によって蒸発して、その時に体の表面から熱を奪っていく。それで涼しく感じるのだよ。みんなも扇風機にずっと当たっていると腕や足が冷たくなっているのを経験したことがあるだろう」
「じゃ、おじさん。なんで寒暖計は温度が上がったの? 水分がついていないから下がらないのはわかるけどね」
てんちゃんが質問してきました。
「ふふふ。それはね、みんなもう一度寒暖計の温度をみてごらん」
コペルおじさんがそういってみんなに寒暖計をさしだしました。
「26度だわ」
千香ちゃんが言いました。
「私、わかったわ。人間の体温はだいたい36度ぐらいだから、息は体温で暖められていて、この寒暖計がさしている温度よりずっと高いのね。だから息を吹きかけると温度が上がるのじゃないかしら」
千香ちゃんが寒暖計に息を吹きかけました。すると、先ほどと同じように温度が上がりました。
「千香ちゃんの言うとおりだね。息は体温で暖められているから寒暖計に吹きかければ温度が上がるのだね」
コペルおじさんが説明しました。
「へえ、何でもない事でも、こうやって色々考えてみるとおもしろいね」
てんちゃんが感心したようにうなずきながら言いました。
「ははは、そうだね。みんなも普段生活しているときにふと疑問に思ったことをもっと深く、色々な事と関連づけて考えてごらん。今まで見えなかった現象が見えてくるから」
ふうちゃん、てんちゃん、まりおくん。そして今日子ちゃんと千香ちゃんは感心しながらコペルおじさんの事を見ていました。

「さあ、まだ夜は長いよ。花火があるからこれからみんなで花火をしようか!」
コペルおじさんは隠してあった花火のセットをみんなの前にだしました。
「やったー! やろう、やろう!」
コペルおじさんとふうちゃん達は元気よく外へ出てゆきました。

 ふうちゃんの夏休み その一 終わり   その二へ続く  風来坊

 

 
 

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